平成27年度
成長分野等における
中核的専門人材養成の戦略的推進事業

h1 背景と経緯

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産業構造の変化、グローバル化、少子高齢化への対応

産業や社会構造の変化、グローバル化等が進む中で、我が国の経済社会の一層の発展を期すためには、経済発展の先導役となる産業分野等への人材移動を円滑に進めるとともに、それらの人材が有する専門技術を高めていくことが必要不可欠である。
また、少子高齢化に伴う労働力人口の減少※1や、地域社会経済の衰退、平均所得の低下※2、若年者の非正規雇用層の増大※3など、様々な雇用問題や将来の不安が生じている。このような中で、持続可能な経済社会を実現するためには、成長分野における付加価値を付けた雇用の創出や、社会の幅広い人々が新たに必要となる知識・技術・技能を修得するための職業教育の機会の充実など環境整備が一層重要となる。

 

諸外国の職業と教育の評価の仕組み

諸外国においては、産業構造の変化やグローバル化、若年者・中高年無業者の増加等の社会的背景により、社会人・職業人の職務能力の高度化を図ってい く観点から、EUのEQF、イギリスの全国資格・単位制度(EQF:Qualifications and Credit Framework)等をはじめとする職業資格の枠組みなど、様々な職業分野において必要な能力を段階的に可視化し、複数段階の評価基準を整備するととも に、学位やサーティフィケートなど高等教育資格枠組み(FHEQ:Framework for Higher Education Qualifications)との対応関係が相互に参照可能となる認証制度の構築が進められている※4。 また、ユネスコ、OECDなど国際機関においても、国境を越えて提供される高等教育の質保証について、高等教育資格だけでなく、職業教育分野においても、必要な知識・技術・技能等の可視化及び認証や、質保証の促進などの取組が進められている※5。 これらは、個人のキャリア開発の参考となるとともに、雇用者にとっては採用等における資格を標準化する手だてとして、さらに、政府や教育機関等の職業教 育・職業訓練のための施策においては、達成目標の設定の手段として用いられていることが期待されている。 また、アジア地域においても、オーストラリアや韓国などにおいて職業資格と高等教育の資格枠組みが整備されるとともに、ASEM等の国際会議において質保 証に関する枠組み構築に対する議論が継続されている※6。ASEAN(東南アジア諸国連合)におい ても経済共同体構築に向けた取組の一環で、ASEAN 地域資格枠組み(ASEAN Regional Qualification Framework、「ARQF」)の構築を検討している。 また、近年、アジア地域では日本企業の進出が著しく、日本の貿易相手国としての割合も高まっているなど、日本とアジア地域で経済の一体化が進展して いる。このような動きを背景として、企業における雇用や処遇などの労働形態も、国境を越えてより緊密になるとともに、職業教育・職業訓練システムや、知 識・技術・技能の修得の評価などを含めた人材育成システムが一層密接に関連しながら発展すると考えられる。

 

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h1 基本的な考え方

我が国の経済社会を支える中核的専門人材養成等

産業構造の変化や少子化が進行する我が国においては、一人一人が能力を最大限高め、付加価値を生み出せる人材の育成が喫緊の課題である。 職業教育に係る世界的動向も踏まえつつ、成長分野等においては、産業や社会構造の変化、グローバル化に対応した新たな知識・技術・技能を備え、我が国の経 済社会を支え重要な役割を果たす中核的な専門人材や高度人材を、量的のみならず、質的な観点から戦略的に確保することが必要である。

 

個人が学びと職業を両立し自らの職業能力向上を目指す社会の実現

経済社会のニーズを的確にとらえ、効果的な専門人材養成を推進するため、企業・業界団体等と教育機関との連携強化を図りつつ、個々人が、自ら希望す る多様な職業生活において必要な知識・技術・技能を生涯にわたって継続して修得し、適切に評価され、職業能力を向上できるよう、「学校」と「職場」間の円 滑な選択・移動が可能となる学習システムの構築が重要である。 我が国の高等教育機関における社会人学生の比率はOECD諸国に比べても低い※7ことから、本取組においては、教育機関において、成長分野等における就業やキャリアアップ等を目的として、

  1. 産業の高度化、新産業創出、地域活性化、グローバル化に伴い新たに必要となる知識・技術・技能を修得する機会の提供
  2. 若年無業者、女性・高齢者の再就職、非正規労働者・離職者等の新たな職業能力や技術を修得する機会の提供

など、学習者を具体的に想定した社会人等がアクセスしやすいシステムの構築を目指す。

 

産業界と教育界の対話と協働による学習システム構築

これまでも企業・業界団体、地域、現代的課題等に対応した多様な学習機会が教育機関から提供されてきたが、それぞれのニーズの分析、それらを反映し たプログラム開発、学習後のフォローアップが十分ではなく、提供される学習内容・成果が、企業・業界団体や地域のニーズと必ずしも適合していない等の指摘 がある。 このような指摘とともに、生徒・学生の就職における雇用のミスマッチの状況に関する指摘等を踏まえると、今後の経済社会の中長期のあるべき姿を念頭に、産 業界等と教育界の間において必要な人材像を明確に共有した上で取り組むことが必要である。 これまでの取組の進捗状況を踏まえると、産学官連携の対話を通じて、必要かつ具体的な人材像の共有、人材養成の目標設定等、全国的な標準モデルカリキュラ ム等の開発・実証などを産学協働で実施するプロセスを着実に経た取組についてはより高い効果が期待される。 一定の成果が得られた段階において、産業界と教育界において修得すべき知識・技術・技能等の可視化を図り、学習成果が社会において評価されるととも に、企業等に受け入れられ、個人のキャリア開発、雇用者の採用、企業在職者のスキルアップ等において積極的に活用されることを想定した具体的な成果をまと め、広く普及することとする。

 

参考:取組の流れのイメージ※8

 

  1. 成長分野等における企業・業界団体等のニーズ調査・分析・優先順位付け
  2. 1を踏まえた育成すべき人材像の目標設定・共有
  3. 必要な人的・物的資源の把握・共有
  4. 全国的な標準モデルカリキュラム、達成度評価手法等の開発・実証 ⇒123を踏まえ教育機関から企業・業界団体等へ全国的な標準モデルカリキュラム案を提示し、企業・業界団体等からの意見を踏まえた改善・充実を図る ⇒企業・業界団体等は、提示された全国的な標準モデルカリキュラムの実証において、必要な講師派遣、教材となるノウハウ、設備、実習の場等を提供するなど 協力を行う
  5. 4を活用して「地域版学び直し教育プログラムを開発・実証 「地域版学び直し教育プログラム」の成果として、企業、業界団体等において就労、キャリアアップ、キャリア転換等に必要な教育プログラムとして提供
  6. 取組のフォローアップ・評価、成果のとりまとめ
  7. 評価において抽出された課題等を踏まえ、全国的な標準モデルカリキュラム、達成度評価手法等を改善・充実
  8. 成果をとりまとめ、全国に普及

 

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産業界と教育界の対話と協働作業を進めるに当たり、産学のニーズを踏まえた関係機関等との調整・とりまとめ役となるコーディネーター機能は、これら取組の実現の鍵となる重要な機能であり、その役割・機能を明確にした上で事業に取り組むことが重要である。

 

学習システム構築の中短期工程

「日本再興戦略」においては、政策群ごとに達成すべき目標(KPI)が設定されており、2013年度から2016年度以降までの施策実施のスケ ジュールが示されている。本事業は、2018年までに大学・専門学校等での社会人受講者数を5年で24万人(現在12万人)とすることが目標(KPI)と して掲げられている※9。 このような目標及びスケジュールを踏まえ、平成26年度以降は、これまで専修学校、大学、大学院、短期大学、高等専門学校、高等学校等と産業界等で 組織された産学官コンソーシアムや職域プロジェクトにおいて、全国的な標準モデルカリキュラム等を開発し、成果がとりまとめられた分野においては、それら を活用し、地域におけるニーズを踏まえた社会人や女性の学び直しに必要なオーダーメード型教育プログラムの開発・実証を行う(「地域版学び直し教育プログ ラム」の開発・実証)。 さらに、平成28年度を目途に、その結果から得られた成果を全国的な標準モデルカリキュラム等にフィードバックし、とりまとめ、全国に提供する。

 

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※1 厚生労働白書《参考資料2 3頁》 ※2 国税庁「民間給与実態統計調査結果」資料より作成 《参考資料2 13頁》 ※3 厚生労働省「就業構造基本統計調査2007」、総務省「労働力調査」等より作成《参考資料2 10頁》 ※4(参考)職業教育に係る国際機関等の動向 ・2002年:欧州31カ国の職業教育担当大臣と欧州委員会とで、コペンハーゲン宣言を採択。以後、2年ごとに欧州職業教育担当大臣と委員会によりフォ ロー アップ。 ・2008 年:欧州資格枠組み(European Qualification Framework:EQF)、欧州職業教育単位制度(ECVET) ・英国(NQF:1980 年代後半~QCFへ2008 年)では、様々な職業に必要な能力を段階的に可視化し、各段階に応じて必要な教育内容等を明らかにするとと もに、高等教育資格との関係を参照可能とする枠組みを構築 ・独(DQR:2008 年~)も枠組みを構築(参考資料1 1頁) ※5 〈ユネスコ、OECD、ASEM、ASEAN等〉 ・ユネスコ「アジア太平洋地域における高等教育の資格の認定に関する地域条約」の動向 ※ Qualification(資格)は、評価・認定プロセスの公式結果(認定証・修了証書・称号)であり、個人が所定の基準に沿った学習成果を達成、及 び、又は特定の業務分野において働くために必要なコンピテンス(総合能力)を持ち、適格性のある機関が判断した場合に得られるもの。(OECD定義) ※ コンピテンス・・・・単なる知識や技能だけではなく、技能や態度を含む様々な心理的・社会的なリソースを活用して、特定の文脈の中で複雑な要求(課題)に 対応することができる力。 ・ユネスコ/OECD「国境を越えて提供される高等教育の質保証に関するガイドライン」及びユネスコ「高等教育情報ポータルサイト」整備への貢献 ・ユネスコTVETの考え方 ※6 ASEM・ASEANにおける職業教育の議論《参考資料1 1頁》 ※7 OECD各国の職業教育関係の高等教育機関への進学における25歳以上入学者の割合は約19%(OECD平均39.8%)、大学における25歳以上入学者 の割合は2%(21.1%)となっている。《参考資料1 28頁》 ※8 参考資料1 16頁:産業界と教育界の対話と協働作業による連携の流れ(イメージ) ※9 参考資料1 5頁:日本再興戦略・中短期工程表(抜粋)
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